平均解決時間
Average Resolution Time
平均解決時間は、問題報告から完全解決までの所要時間の平均値です。ITサポート、カスタマーサービスで、対応速度と品質を測定する重要なKPIです。
平均解決時間とは?
平均解決時間(ART)は、顧客やユーザーが問題を報告してから、その問題が完全に解決されるまでの平均所要時間です。 ITヘルプデスク、カスタマーサポート、技術サポート部門で広く使われ、「対応の速さ」と「サービス品質」を測定する基本的なKPIになります。単なる「返信速度」ではなく、実際の解決までの時間を計測することで、業務プロセス全体の効率性を把握できます。
ひとことで言うと: 「病気を医者に診察してもらってから、完全に回復するまでにかかる時間」です。初診だけでは治らず、治療、経過観察、最終確認まで含めて「完治」とします。
ポイントまとめ:
- 何をするか: チケット作成から最終クローズまでの全時間を自動計測し、傾向分析する
- なぜ必要か: 顧客満足度に直結し、ヘルプデスク部門の効率改善の指標になる
- 誰が使うか: IT部門、カスタマーサポート、金融機関、医療IT、製造業など全業種のサポート部門
計算方法
ARTは以下の式で計算されます:
ART = (全解決チケットの解決時間合計) ÷ (解決チケット数)
例えば、ある月に100件のチケットが完全に解決され、その合計時間が5,000時間の場合、ART = 5,000 ÷ 100 = 50時間となります。
目安・ベンチマーク
| インシデントレベル | 優秀 | 良好 | 標準的 | 改善が必要 |
|---|---|---|---|---|
| 緊急(重大停止) | 1時間 | 2~4時間 | 4~8時間 | 8時間超 |
| 高(業務影響大) | 4時間 | 8~16時間 | 1~2日 | 2日超 |
| 中(軽微な影響) | 1日 | 1~3日 | 3~7日 | 7日超 |
| 低(情報提供など) | 3日 | 3~7日 | 7~14日 | 14日超 |
重大度に応じて異なる目標値を設定することが標準的です。
仕組みをわかりやすく解説
ARTの計測は、チケット作成時刻の記録から始まります。ユーザーが問題を報告するとシステムが自動的にタイムスタンプを記録し、一意のチケットID(例:INC-2025-12345)を発行します。その後、ヘルプデスク担当者は優先度を判定し、原因調査、解決策実装、ユーザーの確認確認、最終ドキュメント化といった一連のステップを実行します。
重要なポイントは、保留時間の扱いです。ユーザーからの返信待機期間や、外部ベンダーからの回答待ちなどの「待機時間」をどう計算するかは、組織によって異なります。多くの企業では、実際にサポートチームが作業した時間だけをカウントしますが、チケット作成から解決まで「すべての経過時間」をカウントする組織もあります。最終的にユーザーが問題解決を確認し、チケットが正式にクローズされた時点で、ARTの計測が終了します。
主な利点
顧客満足度の向上が最大のメリットです。問題が素早く解決されれば、ユーザーはフラストレーションを感じず、サポート部門への信頼が高まります。サービスレベル契約(SLA)の達成可能性判断にもなります。目標ARTが「緊急は2時間以内」なら、人員計画や技術投資の必要性を判断できます。また、プロセス改善の優先順位付けが可能になります。ARTが長い理由が「情報収集の遅さ」か「複雑な技術的問題か」かを分析し、改善施策を集中させられます。さらに、コスト最適化にもつながります。ARTを短縮できれば、同じ人員でより多くのチケットを処理でき、人員配置の効率化が可能です。
実際の活用シーン
SLAコンプライアンス監視 金融機関では顧客に「優先度が高いインシデントは4時間以内に解決」とSLAで約束しています。ARTデータを毎日監視し、SLA違反が起きないよう資源配分を調整します。
技術サポートの改善施策立案 平均ARTが目標の1.5倍だとわかれば、原因特定のための詳細分析を行います。ナレッジベースの充実、自動化ツールの導入、人員増強など、最適な対策を検討できます。
多言語サポートの品質管理 グローバル企業では、複数の言語でサポートを提供する場合があります。言語別にARTを集計し、遅い言語のチームに追加トレーニングを実施するなど、均一な品質維持に活用します。
メリットと注意点
ARTの主な利点は、解決までの全プロセスを可視化できることです。ただし、複雑さの無視が課題です。難しい技術問題と簡単な質問で同じART目標を設定するのは不公正です。問題の複雑さに応じた層別分析が必要です。また、顧客都合の待機時間を含めるかどうかの判断が難しい場合があります。顧客がサーバー再起動に同意できず待機している場合、この時間をカウントに含めるのは妥当でしょうか。さらに、ARTが短いことが必ずしも品質を示さないという課題があります。急いで不十分な対応をすれば、再報告が増え、最終的には品質が低下します。ARTと「初回解決率」「顧客満足度」を組み合わせた総合評価が必須です。
関連用語
- 初回解決率(FCR) — 最初のサポート接触で完全に解決できた割合。ARTが長くても一度で解決できればビジネス価値が高い
- サービスレベルアグリーメント(SLA) — ARTの目標値となる契約上の約束
- チケット管理システム — ARTを自動計測するITSM基盤システム
- 根本原因分析(RCA) — ARTが長い理由を特定し、改善策を導く手法
- ナレッジマネジメント — ARTを短縮するために必要な情報基盤
よくある質問
Q: ARTと「初回対応時間」の違いは? A: 初回対応時間は「最初のサポート担当者が返信するまでの時間」、ARTは「完全な解決まで」です。初回対応が速くても、複数回やり取りが続けば、ARTは長くなります。
Q: 複雑さの違うチケットを一緒にART計測してよいか? A: 避けるべきです。優先度別、複雑さ別に層別してARTを計測し、それぞれの目標を設定するのが標準的です。複合的に計測すると、複雑な問題の実態が見えなくなります。
Q: ARTを改善するには何をすればよいか? A: ナレッジベースの充実、自動化ツールの導入、チームのトレーニング強化、人員増強など複数の施策があります。ARTが長い根本原因を調査し、最大の効果が見込める施策から着手することが重要です。